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池谷薫監督「延安の娘」を見た

先日、ツタヤディスカスで借りた「延安の娘」を見た。

何の気なしにポチッと予約してしまったものだ。

延安の娘 公式HP

黄土高原が果てしなく続く“中国革命の聖地”、延安。その貧しい農村で育った何海霞(フー・ハイシア)は、自分を棄てた実の親を探していた。彼女の両親
は、文化大革命の折に下放した紅衛兵だった。彼らの間では恋愛さえも禁じられ、違反者は“反革命罪”として処罰される時勢であったため、海霞は生まれて
20日で子供のいない農家に養子に出されてしまう。黄玉嶺(ホアン・ユーリン)もまた、かつての下放青年のひとりだった。生みの親を探す海霞の協力者であ
る彼には、国家により子供を中絶させられたという悲痛な過去があった。海霞の親探しに奔走するなか、彼は無実の罪で投獄されたという古い仲間の声に衝き動
かされるように、冤罪事件の真相究明にも乗り出す。
失われたアイデンティティと、人としての尊厳を取り戻すため、封じ込められた歴史の暗部に足を
踏み入れた市井の人々の苦闘を描く本作は、『蟻の兵隊』の池谷薫の初監督作。当初はNHKのハイビジョン番組として2年に渡る取材を経て制作された。
170時間にも及ぶ撮影テープは、02年度芸術選奨
文部科学大臣賞を受賞した吉岡雅春が編集。人物の複雑に揺れる心理を、喜怒哀楽を絡ませ詩情豊かに切り取っている。音楽は、巨匠チャン・イーモウ監督の
『初恋の来た道』や『この子を探して』などを手がけた三宝(サン・パオ)。
親子の再会、イデオロギーに翻弄された青春…30年に渡る封印を解き、忌まわしい記憶と対峙する人々の姿に心を揺さぶられる、感動の物語。
   

 

学生時代、中国経済を専攻していて、指導教授が現地の農村を調査する時など荷物もちとして同行させて頂いたことがある。そんな時に現地で、文革を生き抜いた人の話を聞く機会があった。

強烈な話で忘れられない。

医師としてと敬われていたのだが、ある日突然「走資派」のレッテルを貼られ、自分の子どものような年齢の暴行される。町中を小突き回されて、あげくジェット型と呼ばれる屈辱極まりない姿勢で自己批判を強いられる。それまで慕ってくれていた人は誰一人助けてくれない。

また、中国からの留学生で腕に数字の刺青を入れている人がいた。

自分で彫ったものらしい。

文革の最中に命の危険を感じて、遺体が自分のものだと両親が判別できるようにするためだという。

そんなこともあって学生時代に文革にまつわる映画をいくつか見た。

今でも覚えているのは謝晋監督の映画『芙蓉鎮(Hibiscus Town)』(1986年)。

主人公が「どんなに無様でも豚のようになってもなんとしてでも生き延びてやる」と叫ぶシーンが忘れられない。

それから20年近くたって、「延安の娘」を見た。

「よくもここまで取材された」という力作である。

当初NHKのハイビジョン番組として取材がスタートしたとのことだが、これを映画として公開しなければならない状況に陥ってしまう理由も当たっているかどうかは別にして想像がつく。

しかしそのような状況に陥った時に、ディレクターがあきらめず映画として公開するということがどれほど大変なことは想像につかない。

取材には責任がつきまとう。

テレビ局には事情がある。

この狭間で、リスクを取れるディレクターは少ない。

池谷薫監督はそんな勇気のある人である。

実は、20数年前、就職活動の際に池谷監督にお会いしたことが、恐らくある。

テムジンというテレビ番組制作会社の面接を受けた時、面接してくださった方だと思う。

その時すでにテムジンはNHKスペシャルの中国ものを数多く手がけ、多くの傑作を世に問うていた。私は是が非でもこの制作会社に入りたいと考えており、指導教授と現地調査に行ったときの映像を編集して履歴書に同封したりしていた。

そんなテムジンが手がけた番組で、当時の私が最も憧れていた番組が

「独生子女」

「黄土高原の民はいま」

「西方に黄金夢あり」

「人間は何をたべてきたか~灼熱の海にクジラを追う ~インドネシア・ロンバタ島~」

などである。

これらはいずれも池谷薫監督がディレクターとして担当したものだ。

面接の時、そんなあこがれの人が目の前にいるということに感激したことを今でも覚えている。

現在はスキンヘッドのようだが、当時は少し長めの髪をゆらしながら、現場で感じたことを率直に語っておられたのが印象的だった。

結局、テムジンから内定をいただくことはなく、なんとか別の制作会社にもぐりこんだが、池谷薫監督はずっと憧れだった。

そんなあこがれはいつしか、すっかり忘れ去っていた。

そこに延安の娘はやってきた。

北京でくすぶっている王露成のもとに延安から海霞が尋ねてくるという映画のストーリーと、私がこの映画に出会った状況は少し、似ているのかもしれない。

なお、池谷監督の著書「人間を撮る」には、さまざまな番組で撮影時に何を考えていたのかが赤裸々に書かれており、オススメだ。「独生子女」で問題となったシーンについても詳しく書かれている。



代表取締役
里田 剛

仕事の魅力を映像化することで、中小企業を元気にする企業映像コンサルタント。1993年関西大学卒業後、テレビ番組制作会社に入社。テレビ東京「開運なんでも鑑定団」などでディレクターを勤めた後、TBS「サンデー・ジャポン」でサンジャポフリージャーナリストとして活躍。2006年、メディアフォーユー株式会社を設立し、企業映像の制作を開始。2010年、ITVA-日本コンテストで金賞を受賞。2013年、映文連アワードで準グランプリを受賞。2011年、ドキュメンタリー映画「マジでガチなボランティア」が、ハリウッドの映画祭、LA EIGA FESTで長編映画部門グランプリを受賞。

テレビ、映画で培った制作で、中小企業の魅力を映像化している。

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