松屋銀座で開催中の「没後20年 特別展 星野道夫の旅」に行ってきた。
星野道夫は多くの映像制作者にとって特別な存在で、私もそんな人間の一人だ。
22年程前に、Switchでの星野の特集「狩猟の匂いを我々は嗅ぐことができるか」を見つけ、以来、その著作や写真集を熱心に読みふけった。
しかし2007年の写真展「星のような物語」以来しばらくは、星野の写真を眺めることも、文章を読み返すこともなかった。
久しぶりに、しかも巨大なプリントで星野の写真を見ると、当たり前のことだが、「本当に命がけで撮っていたんだな」ということがよく分かる。
愛用していたというアサヒペンタックス+100mF2.8のレンズで、あの有名なクマの親子や眠っているクマ、出会い頭のムースを撮るには、相当接近しなければならない。ほんの5〜6メートル先だろう。襲われるギリギリの状況でフォーカスを合わせ、露出をコントロールし、シャッターを押していたのだ。
1m四方はあろうかというプリントで見ると、どの写真にもそうした星野の息遣いが感じられ、緊張する。
デジタルになった今のように、いくらでもシャッターが切れるわけでも、撮った写真をすぐに確認できるわけでもない時代に、これだけの写真を撮り続けた星野道夫。
その技術の高さと眼差しの鋭さ、そして強靭な使命感が、死後20年経ってもこれほどまでに人々から求められる理由なのだ。
展示会では、星野が愛用していたというアサヒペンタックスやニコンFなどのカメラ、ドイツ製のカヤック、NHKが取材してお蔵入りしていた映像なども展示されており、非常に興味深い。
20年以上の時を経てなお輝く写真の前で、日々忘れ去られゆくものしか作れない者の心は揺さぶられたのであった。。。。