お客さんから、納品後お礼にとお菓子を頂いた。
普通のことに聞こえるかもしれない。
でも、これは普通のことではない。
職人気質な映像制作会社であるとするものにとっての勲章である。
半年ほど前、ある大手企業の担当の方から直接問い合わせを頂いた。
「映像を作るのは初めてです…」とのこと。
3社コンペだったが、弊社に発注して頂けることとなった。
制作に入るにあたって、文字だけの台本を書いた。
だが、分かりずらいということで、次に絵コンテを書いた。
そうして、内容に関して同意を得てから制作したつもりだった。
その後、撮影をして編集をして試写を行った。
だが、出来上がったものは、イメージしていたものとは違うということで、ご満足頂けなかった。
ある1人の社員の方の働く姿にフォーカスして、その方への共感を軸に入社のモチベーションを上げるという方針で制作したのだが、1人の社員へのフォーカスということ自体が会社として受け入れずらかったのではないかと思う。
情けなかった。ベンチャー企業の社長さんから直接依頼を頂くことが続いていたことで、大手企業のやり方に対する自分の想像力が不足していた。
作り直すことを提案しながら、いろんなことを思った。
試写したものは、その社員の人柄や働く姿を通じて職場の魅力を伝えうるものであると思っていたので、残念でもあった。
そこで、こんな記事を書いた。
客というものは、自分が本当に欲しいものを言葉にすることはない。
客の本当に欲しい物を見つけて形にするのが自分の仕事だ。
今までは、自分で探して、主に自分の手で形にしてきた。
でも、自分の手だけでは形にできなくなってきて、誰かの手を借りて形にすることに本腰を入れはじめた。
もちろん、これまでとはやり方を変えなければならない。しかし、すぐに良いやり方が見つかるはずもないので、これまでと同じ方法で他人の手を借りながら様子を見ている。
案の定、苦しい状況に陥る。この苦しい状況はしばらく続くだろう。
やり方を変える時、自分の役割も変わる。
役割が変わる時、人は成長する。
がんばろう。
たまたまこのブログを、この大手企業の担当の方が読まれた。
そしてその後、修正作業を行い納品すると、以下のようなメールを下さった。
ご本人に許可を頂いたので転載する。ーーーーーー
さて、なぜ改めてメールをさせて頂いたかというと、
「当社側の調整不足、ビジョン不足」の中で粘り強くご対応されたこと
に感銘したからです。ちなみにこのメールをお送りする決意をしたのは◯月◯日に来社
され、
プロジェクターに投影されたMAC画面を見たときです。
この日のMACにブログ更新ページが見えて、ブログを見てしま
ったんです。そう、まるで当社との苦悩が書かれたページを。思いこみかもしれませんが、声をかけたいと思った瞬間でした。
なんだか個人のブログみたいになりましたが、
「プロセスも含めて、ありがとうございました」をお伝えしたかったと
いうことです。次に接する機会がTVなのか、映画館なのか、
youtubeなのか、はたま
た渋谷ですれ違うのかわかりませんが、今後のご活躍を楽しみにしてお
ります。本当にありがとうございました。
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自分としては、その後の修正対応も、そんなにお褒め頂けるものではないような気がしている。それでもこのようなメールを下さったということとその行為に及んだお気持ちを持ってくださったということは事実だ。
そしてこのメールを下さった方が、近くにお越しになったからと、お立ち寄りくださり、その上お菓子まで頂いたのだった。
ちなみにお菓子を持っているのは弊社の社員アイドル、亜美である。そして、職人気質な映像制作会社であるとの自負から、改めて思う。
まず、最初の試写で「感動」させよ。
そこで失敗したなら、次に何で「感動」させられるか考えよ。
「映像」を作るという仕事は、「感動」をもたらすということなのだ。