田原総一朗 セレクション『ノンフィクション劇場 老人と鷹』『ノンフィクション劇場 乾いた沖縄』を見て、田原さんのトークを聞いた。
『ノンフィクション劇場 老人と鷹』(1962年/25分/DVD版/日本テレビ/プロデューサー:牛山純一)最後の鷹匠と言われる沓沢朝治の日常を捉えたドキュメンタリー。
第15回カンヌ映画祭テレビ映画部門グランプリ受賞作品。『ノンフィクション劇場 乾いた沖縄』
(1963年/25分/DVD版/プロデューサー:牛山純一/演出:森口豁)沖縄の黒島で生きる二人の老婆の日常を描く。
幼稚園ぐらいの頃に見て妙に記憶に残っている「すばらしき世界旅行」という番組がある。
番組の最後に出てくるクレジットで「牛山純一」という名前が出てくる。幼心に、その「牛山純一」という字が醸し出すなんとも言えない怖い感じが、秘境と呼ばれる民族の風習、宗教、儀式、などを紹介する番組の雰囲気と合間って、なぜか忘れられないでいた。
その後大学生となり、就職活動ということになって、テレビ番組制作会社をいろいろと受けた。ドキュメンタリーを志していたので、牛山純一さんの日本映像記録センターの採用試験も受けた。
日本テレビゴルフセンター?という名前だったような気がするが、そんなゴルフ練習場の近くにあったオフィスにスーツ姿でお伺いすると、同じような学生が5人ぐらいいて、会議室に通された。最初に採用試験だと言ってウイスキーと氷とグラスが出てきた。すでに牛山さんは酔っているようで、まずこれを飲めとのこと。そんな採用試験だった。
質問は?と牛山さんに聞かれ、私は青臭い質問をして、牛山さんに罵倒されたような気がする。また「撮るのに忙しいから、撮った映像や作った番組は全く整理していない」とも仰っていた。貴重な映像もそうして見られなくなっていくものなのか…と思ったように記憶している。
今回上映されたのは、そんな牛山さんが作りあげた「ノンフィクション劇場」の中の2作である。「ノンフィクション劇場」には、今回上映されたもの以外にも、政治的な思惑から放送が中止された「ベトナム海兵大隊戦記」という番組があり、上映後のトークでも田原さんからその話が出た。
私がこの「ベトナム海兵大隊戦記」の話が出る度に思うのは、なぜ牛山さんの勇気や怒りは武勇伝のように紹介されるだけで終わってしまうのだろうか?ということだ。
「時代が違うからさ」という事は簡単だが、そういう人が牛山さんと対峙できるほどのエネルギーを発することはない。
「ベトナム海兵大隊戦記」の放送が中止されてから約50年。
私が日本映像記録センターの面接を受けてから20年。
私もまた牛山さんに罵倒されることさえかなわない存在でしかない。