『報道の魂 あの時だったかもしれない』(2008年/90分/カラー/DVD版/東京放送/ディレクター:是枝裕和)
2008年1月に亡くなったメディア・プロデューサーの村木良彦。彼は故・萩元晴彦と共にTBSから独立し、テレビマンユニオンを創設した。二人の後輩に当たる是枝監督が、生前の二人へのロング・インタビューと当時のドキュメンタリー映像を織り交ぜて、テレビ激動期の姿を浮かび上がらせる。
是枝監督はその中で論客の一人として寄稿されていた。
私にとってはこれが是枝監督を知ったきっかけだ。
是枝監督は、デビュー作?でいきなりギャラクシー賞優秀作品賞を受賞した、フジテレビのNONFIX『しかし・・・ 福祉切り捨ての時代に』 という番組の制作時のことや、自分がムスタンで同じ状況に陥ったならどのように作品を作るか?といったことを書かれていたように思う。
撮影中に起きていることのどこに注目するかが力量であって、やらせなんかで、番組が面白くなりようがないという論理を展開されていて、強烈な印象を持ったように記憶している。
是枝監督の記事をきっかけに、その後、夢中になって是枝監督の所属する制作会社テレビマンユニオンの創業者、村木良彦さんや今野勉さんの本を読んだ。
さて、『報道の魂 あの時だったかもしれない』という番組は、「テレビ的な表現とは何か」をとことんまで追求した男の話だ。
テレビが衰退期に入っている現在、多くの人にとって興味が持たれるテーマではないかもしれない。
しかし、番組を作っている人にとっては、仕事の根幹である。
産業が衰退期に入ると、そこで培われた知識や見識が失われる。
テレビもまた、そのようなフェーズにある。
だからこそ、今一度、今回の上映を機会にまた考えなおすべきなのだ。