どうも森です。
毎月1日は映画の日、という事で、
会社の「映画の日は映画を観よう」制度を使って映画を観ようと試みて、
いつもより少し早めに業務を終わらせ、会社を出た。
「マクロスF サヨナラノツバサ」が気になっていたので、
新宿バルト9に向かおうとする。
しかし、ネットで予約情報を見ると、なんと満席。
空席がある回は、終電を逃してしまう時間帯しか無い。
公開から一ヶ月以上も経っているのに…。
気をとりなおして、自宅から徒歩でも行ける、
ワーナー・マイカル・シネマズ板橋へ向かう。
12スクリーンあるので、1つくらいは良いのやっているだろう、という算段である。
しかしその目論見は甘かった。
なんと地震の影響で、4月2日までは機器点検で営業休止。
先々週あたりにも行こうとして、やってなかったのは覚えていたけれど、
まだ休止しつづけているとは思わなかった。
3週間以上休んでいた事になるが、大丈夫なのだろうか。
ブッキングされてたけど、上映されなかった映画とかありそうだ。
単館系もよくやっている映画館なのだが、そういう映画から切られてそうだ。
さて、これからどうするか、と考える。
池袋まで戻れば何かやっているかもしれないが、
時間的にもレイトに間に合うか微妙なところ。
結論から言うと、TSUTAYAでDVDを借りた。
勿論映画の日だからといってDVDは安くならない。
しかし、映画を観ることが大切なのだ。
借りたのは、こちら
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
最近話題になっていた、
「ソーシャル・ネットワーク」のデビット・フィンチャー監督の作品だ。
フィンチャー監督といえば、エアロスミスのPVをやっていたり、
映画「セブン」や「ファイトクラブ」「ゲーム」等、
ビジュアルのかっこ良さや、大どんでん返しが話題になる事が多かった。
しかし実はそんな事より、感情の機微を描くことがフィンチャー監督の真髄。
感情移入できるからこそ、脚本とビジュアルが生きる。
それを裏付けた作品が「ゾディアック」だ。
この映画、実際の連続殺人をモチーフにしている。
主人公が犯人を追い詰めていくというストーリーなのだが、
特に派手なアクションがあったり、急激な展開があるわけでもない。
それなのに、静かに、胸を締め付けるような感情を抱かせる。
表面上はサスペンスだが、中身は深淵な人間ドラマが繰り広げられている作品。
これまでの作風とは違うと、誰もが感じたのではないだろうか。
これまでの作品作りと何が変わったのか。
それはワークフローの完全なデジタル化だ。
ヴァイパーというデジタルカメラで撮影され、
編集はMacで行われ、
仕上げまで全てデジタルで行われる様になった。
デジタル化により、ワークフローが効率化され、時間が生まれる。
この時間は監督にとっては、劇的な変化だと思われる。
カットの積み重ねにより多くの時間を割く事で、
より重厚なドラマを紡ぎ出していったのではないだろうか。
フィンチャー監督も「もうアナログには戻れない」と発言している。
さて、前置きが長くなってしまったが、
「ゾディアック」と、話題の「ソーシャル・ネットワーク」の間に作られた映画、
それが「ベンジャミン・バトン」だ。
「セブン」「ファイトクラブ」のゴールデンコンビ。
生まれながらに老人の姿。年齢を増す毎に若返っていくという、
タイトル通りの「数奇な人生」。
同じ原作で70年代にスピルバーグで映画化の企画もあったそうだが、
一人の役者の加齢による変化を表現するのは技術的に難しいとの事で見送られていた。
今回、この難題を解決したのは、アップルの元技術者が開発したシステム。
これにより演者の顔と胴体を入れ替える事ができたそうだ。
なので、赤ん坊から老人まで、全て顔はブラッド・ピットが担当。
特殊メイクを組み合わせ、何度も頓挫したこの映画を完成させた。
(アップルの元技術者というのが、
もし、開発が中止された合成ソフト「Shake」の開発者だとしたら、なんと勿体無い…)
こうしてみると、VFXばかりが注目されてしまうが、
これは完全なるヒューマンドラマ。
数奇な人生というが、逆の運命を辿ろうとも、
人生は同じ喜びや苦しみがある。
人生とは数奇なものだ。と感じた。
こういう、一人の人間の一生を描く系に弱いです。
フィンチャー監督の人間を描く力が、存分に発揮されていると思います。
それは次作「ソーシャル・ネットワーク」にも言えて、
Facebookの話を、よくあそこまで人間ドラマにできるな、と驚き、
次回作にまた期待してしまうのです。
デビット・フィンチャーという監督は、
映画におけるデジタル化を、最も有効に行なっている監督の一人だと断言できます。