今日は僕のバイブルである下記の本について書いてみることにしました。
シネマトグラフ覚書―映画監督のノート/ロベール・ブレッソン
¥2,310
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この本は、名前の通り、ロベール・ブレッソンの映画というアートに対しての考えをまとめた、すばらしい本です。
フランスでは肌身離さず持ってました。向こうでは3ユーロくらいしかしない安い本なので、4冊くらいボロボロになるほど常時携帯してました。
「シネマトグラフ」という単語は、彼が目指した他のアートから独立した立派な分野である映画作品を示す名前です。僕に絶大な影響があったこの本を日本でもプロモーションしたくて、日本訳も買ってしまいました。
原語版を知っている僕だからこそ!と思い上がっちゃって、ここで日本訳について、長所短所を少しお話し致します。
まず、お値段がフランス版よりずっと高いですが、内容に価値を付けるとしたら、これよりもずっと大切な言葉たちがぎっしり入っているので、全然良いと思いました。
しかし、堅い表紙など、携帯には向いてないのが難点です。撮影現場や、製作中に言葉に詰まったら頼りにする辞書みたいなものなので、ちょっと残念でした。
一番びっくりしたのは原作との分かりやすさのギャップでした。
伝えている内容はもちろん同様ですが、通訳を担当した方が、非常に賢い方で(松浦 寿輝という方です)、内容が非常に難しく感じるようになりました。
フランス語版は、中学生でも意味は十分通じるし、自分も文章を暗記しやすかったり、会話で使ってもおかしくないのに、日本語版はインテリっぽくなってました。
安心して頂きたいのは、ブレッソンの根本的な考え方(シネマとシネマトグラフの違い。役者とモデルの違いという彼独自の考え方など)を紹介する文章は意味がちゃんと伝わることです。なので、一通り読めば、ある程度のことを理解出来ると思います。しかし、100%理解するには、ある程度の知識と日本語力が求められます。(僕がやっぱり理解力で普通の日本人に比べてすっごい劣ってたって可能性も否定は出来ないですが。。。)
正直な意見、
特に学のない僕でも読めて、ズボンのポケットに常に入れて、赤ペンで文字を囲んだり、余白にメモを取ったりしするのがこの本の醍醐味だとも思ってました。
和訳は、そういう意味では、原作の雰囲気とはやっぱりかけ離れていると感じました。
しかし、彼が50年前に思い描いた映画の姿は、今でも素晴らしいことに違いはありません!
映画が好きで色んな考え方を知りたい、映像をやっていて自分に何か物足りないと感じている、
真剣に「映像とは」「音声とは」「役者とは」「監督とは」などの疑問を抱いている人には、この本は宝物です!!映画を尚更愛する機会を与えてくれるだろうと思います。
PS:松浦寿輝さんの訳で、「カメラ」を「キャメラ」と書いちゃってるんですが、フランス語の発音でも「カメラ」なんですよ。。。増刷する際には正直「カメラ」に直して欲しいです。読んでて違和感を感じますし、そういうディテールが「インテリ」っぽく聞こえてしまって、本との親近感が感じられなかったです。
松浦寿輝さんの著作歴や学歴は本当にすごいので、こんな日記を書いてしまって恐縮です。今度、彼の小説を読んでみますが、きっと難しいでしょうね。