6月になり、2011年に向けての新卒採用市場が動き始めている。
私の会社では、採用ビデオの制作依頼を頂く事が多い。
採用ビデオは会社説明会での上映するというのが主な用途であり、社外に出したくないものが写りこむことも多いため、納品はDVDで行う事が多い。
一方で、就職情報サイトや、自社のWebサイトの採用ページに掲載するケースも増えている。そこで例えば、YouTubeにどれくらいアップされているのかが気になり、「新卒採用」「会社説明会」などで検索してみた。
YouTube – 新卒採用 via kwout
検索結果からみられる傾向は
1)零細企業が
2)インタビューや社長の講演を
3)社内で制作する
ものが多く、内容的には失礼ながらここで語る程のことはない。
そんな中、こちらの会社の採用ビデオは、広告的手法や音楽PVの手法を取り入れ、面白い。
【新卒採用】新入社員の一問一答
【新卒採用】スーパーエディション的オフの過ごし方
効果はどうなのだろうか?
一方、英語圏に目を向けると、
2006年に公開され話題となったGoogleの採用ビデオを筆頭に有名企業のものが見られる。
Google Recruiting Video
Cisco Recruiting Video
Microsoft recruiting
が、こちらもインタビューが中心の「ありがち」な内容に終わっている。
そうこうしていると、世界各国の軍隊への採用ビデオが目についた。
Military recruitment videos from around the world
よくよく考えれば、最も採用に力を入れているのは軍である。
軍人とは、言うまでもなく命がけの職業である。
しかし、広告代理店のような華やかさはなく、金融のような金銭的な報酬も期待できない。
国を守るという大義は、安全で華やかでステータスのある日常生活と比較すると、簡単にかすんでしまう。
そこで、映像による訴求が行われる。
では、何を訴求するのか?
ここに格好の比較例がある。
アメリカとスウェーデンの募集広告の比較だ
軍隊の採用映像のほとんどが戦争映画の「勇壮」なイメージをなぞっている。アメリカはその手法だ。
人間どおしが殺し合う悲惨さをヒロイズムで乗り越えようとしているのだ。
しかしながら、ヒロイズムになじめない人には、嘘くさすぎて拒絶されるだけ。
一方で、スウェーデンのものは「日常」と比較することで「安全」を訴求している。
故にもっとも軍人として求められやすい、ある種の単純な思考をする人からは共感を得られないいかもしれない。
では、どちらが有効なのか?
1)応募総数
2)応募者の年齢、学力、職業経験の傾向
3)訓練中の脱落率
4)昇進率
これらの項目において、
1)「勇壮さ」を紋切り型に高精度で表現する事が有効なのか?
2)軍人という職業が持つ本来の意味を深く掘り下げる表現が有効なのか?
これは、問題解決のために映像を作る場合、根源的な問題である。
軍隊という極限の職業に人を誘うための映像には、その極限性故に、採用ビデオが内包する様々な問題をあぶり出す力がある。